Amazon広告を運用するのに手動で行う代理店でなくAIツールに任せるのが一般的な時代となってきました。
しかしAIツールはいくつか存在し、その方式がブラックボックスとなっているため結局どれを使ったらいいか分からない状態にあると思います。
弊社でもAIでのAmazon広告運用最適化を行なっているので採用しなかったアルゴリズムや採用したアルゴリズムについて詳しく解説したいと思います。
Amazon広告で採用されるAIの種類
- 数理モデルのアルゴリズムを使った予測モデル(ビッグデータ分析)
- 市場(カテゴリ)決め打ちモデル
- ルールの最適化モデル
数理モデルのアルゴリズムを使った予測モデルについて
一般的にAIで数値予測を行う際には以下のようなアルゴリズムが利用されます。
- CNN-QR
- Deep AR+
- Prophet
- NPTS
- ARIMA
- ETS
CNN-QR
CNN-QR、畳み込みニューラルネットワーク – 分位点回帰は、因果畳み込みニューラルネットワーク (CNN) を使用して時系列を予測するための独自の機械学習アルゴリズムです。
Deep AR+
再帰型ニューラルネットワーク (RNN) を使用して時系列を予測するための、独占的な機会学習アルゴリズムです。DeepAR+ は、数百の特徴時系列を含む大規模なデータセットで最適に機能します。このアルゴリズムは、フォワードルックの関連する時系列と項目メタデータを受け入れます。
Prophet
Prophet は、非線形トレンドが年次、週次、および日次の季節性に適合する加法モデルに基づく時系列予測アルゴリズムです。これは、季節性の強い効果といくつかの季節の履歴データを持つ時系列で最適に機能します。
NRTS
ノンパラメトリック時系列 (NPTS) の独占的なアルゴリズムは、スケーラブルで確率的なベースライン予測機能です。NPTS は、スパースまたは断続的な時系列を使用する場合に特に役立ちます。
ARIMA
自己回帰和分移動平均 (ARIMA) は、時系列予測に一般的に使用される統計アルゴリズムです。このアルゴリズムは、時系列が 100 未満の単純なデータセットに特に役立ちます。
ETS
指数平滑法 (ETS) は、時系列予測に一般的に使用される統計アルゴリズムです。このアルゴリズムは、時系列が 100 未満の単純なデータセット、および季節性パターンのあるデータセットに特に役立ちます。ETS は、時系列データセット内のすべての観測値の加重平均を予測として計算し、時間の経過とともに重みを指数関数的に減少させます。
数理モデルを使った数値予測の問題点
Amazonが自社のビッグデータを活用して特定の店舗の特定の商品はこのキーワードでこの価格で出稿すると売上が伸びる、というのを予測する場合は上記のようなAIアルゴリズムを適用すれば大丈夫です。
ただしこれらはビッグデータを分析して最適解を導き出すような場合に用いられるものでそのままAmazonの広告運用に適用しても大した効果を発揮しません。
実際に弊社でも開発段階で上記のモデルを全て試していましたがその場合は手動で運用する方がパフォーマンスが高いことも多くなっていました。それは
- 十分なデータが集まるのに時間がかかる
- 自社以外の外敵要因(他社の広告単価など)が影響するのに自社データのみを使って最適化するのは不可能である
為です。
商品の実販売数を元に販売数を予測するような際には使えるモデルですがその場合でも新規の競合の出現などが頻繁に起こり外部要因に変化が起こりやすいAmazonの場合は数値予測の結果からもズレてきやすいので注意が必要です。(ただし誤差を含めた予測から大きく外れている場合逆に何かしらの外的要因が発生している可能性が高い、と考えることが出来ます)
市場(カテゴリ)決め打ちモデルについて
こちらは集まったユーザーのデータからホビーカテゴリーの5000円未満では広告費200円での出稿がCVRが一番高くなっているなどのデータをAIで分析し、ユーザーが特定のカテゴリの商品で広告をかける際にそれを用いるタイプです。多くのAI広告運用ツールに採用されているように見受けられます。
このタイプはそもそもAIである必要もなくデータをプログラムで自動化しているだけです、ただ世の中でAIという言葉が流行ってから純粋なディープラーニング以外でもAIという言葉が適用されるようになっていますしAIに対して一意の決まった定義が定まっているわけではないのでそこは問題としないことにします。
このタイプは多くのAIでの広告運用に採用されており弊社でもテストしたことがありますが最もパフォーマンスが低く出るタイプとなっています。
それもそのはず仮にA、B、C、D、E、F、G、H、I、Jという10社が同じホビーのカテゴリ、5000円未満で商品を出していたとして一番うまく行っているのがC社のデータだとします。
それをAIで掬い上げて他の企業の運用にも適用したところで上手くいくでしょうか?
結論としては上手くいきません。そもそもタイトルも商品ページのデザインも異なるので他社の運用データを基準にしても意味がありません。これらの条件が揃っている状況下ではギリギリ意味がありそうですがそれさえも実は意味がありません。
なぜならこちらも数理モデルの時同様そもそもAmazon本社のようにデータが大量に集まっている前提での設計になっています。仮にビッグデータが集まっていてもパフォーマンスが低く出るモデルなのに一企業が集められるデータでは心許なすぎます。
先ほど例に出したホビーのカテゴリ、5000円未満という区分けざっくりしすぎていると思わないでしょうか?
ホビー >ロボットのプラモデル・模型 4000~5000円という区分けではどうでしょうか?
これであればセグメンテーションがかなり細かくなっておりこのデータがもし取れているのであれば使えそうです。ただしこの場合も前述の通り他社のデータをそのまま自社に当てはめても意味がないので結局この市場(カテゴリ)決め打ち対応は破綻していることになります。AIを名乗るツールとしては設計が簡単なのでこのモデルが採用されていることが多いだけなので注意が必要です。
ルール最適化モデル
このやり方はAIが登場するまでに優秀な広告代理店が手動で運用してきた方法の延長にありそれを自動化したモデルとなります。弊社のAIによるAmazon広告自動最適化にもこのモデルを採用しています。
Amazonの1時間毎に取得できる指標に従ってAcos(広告高売上比率)が一定以上になったら広告単価を下げる、あるいは出稿を停止するなどの運用を行う方式です。
AIがない時代は皆手動で運用しているので1日1回の改定でも良かったので手動で運用する広告代理店に依頼しても十分な成果が出ました。しかし今はAIで運用する時代です。Amazonの価格改定を手動でアナログで行なっている企業がもはや皆無なようにAmazon広告も自動で最適化していかないと厳しい時代になっています。
ただしこのようなルール適用型の広告代理店があれば必ずしもAI運用である必要はありません。広告代理店の弱点は広告費の見直しや出稿停止のペースが1日1回の所がほとんどで土日に至ってはノータッチな所が多い所です。
仮に広告代理店がルール適用型の運用ツールを使って一日複数回の価格改定+土日も含めた運用を行うのであれば少なくとも上記2つのモデルのパフォーマンスは追い越すでしょう。
しかしもう一つ問題があります。それは広告代理店は運用手数料が高いという点です。一般的な広告業界の慣わしで運用手数料は20%になっています。弊社のAIツールの場合は運用手数料は広告費の5%です。
ただしAmazon広告にはスポンサーブランド動画広告などクリエイティブ猟奇が絡む部分もあるのでAIツールによる最適化だけでは解決できない問題もあります。そのため広告代理店に依頼する意味がないかというと決してそんなことはありません。
実際に弊社でもAIによる広告運用サービスを運営すると同時に動画作成を含んだAmazon広告全般の運用代行業務も行なっています。特にスポンサーブランド広告やスポンサーディスプレイ広告は数値だけ最適化を目指そうと思っても動画や広告画像が悪ければパフォーマンスが下がる部分です。
もっと言えばスポンサープロダクト広告の運用も数値の最適化だけ考えればAIでの運用が最適なのですが商品ページのデザインやレビューなどがCVRに影響してくる部分です。その為弊社ではページの作成も代行しています。
結論としてはルール適用タイプであればどの広告運用ツールを使ってもどの代理店に依頼しても自由ですが以下の条件が揃っている企業に依頼するのがおすすめです。
- 広告運用ツールで土日も含め自動運用している(AIかどうかは問わない)
- スポンサーブランド動画広告の動画制作に対応可能
- Amazonのページ制作に対応可能