今はどの業界・業種であっても、同じような価格・品質・機能で揃えられた商品やサービスで溢れており、購入者にとって選択肢が過剰にある時代です。
ビジネスを成功させるには、無数の選択肢の中から自分のお店や商品を選んでもらうことが重要です。
他の商品や店との差別化を図るには、「このお店だから」「この人だから」という理由でお客さんに選んでもらえるようなブランディングをする必要があります。
ビジネスにおいて、価格・品質・機能・デザイン・コンセプトで選んでもらうよりも、この理由で選んでもらえる方が替えが効かない分究極の差別化と言えるでしょう。
今回はそんな究極のブランディングの方法や成功事例を解説して行きたいと思います。
- ブランディングの意味
- ブランディングに込められた価値観
- ブランディングの成功事例
ブランディングの意味
まずはブランディングの意味について解説したいと思います。
端的に言うと、ブランディングとはブランドになる為の付加価値と言えます。
購入者にとって「このブランドだから買いたい」と思わせることができるもの。
それがブランディングが成功している「ブランドの力」です。
他のものには無い価値を付随させ、違いを生み出す手法とも言えます。
「このブランドならどんな値段でも欲しい」と沢山の人に思わせることができれば、集客に奔走することもなく、ブランドに人が集まってくれるのです。
デザインや価格や機能で選ばれるのではなく、「このお店だから」で選ばれるブランディングをしていきましょう。
ブランディングに込められた価値観
商品に様々な価値を見出し、商品そのもの価値を上げることがブランディングです。
なので、ここでは以下の3つの重要な価値について詳しくお伝えしたいと思います。
- 機能的価値
- 感情的価値
- 自己表現的価値
機能的価値
機能的価値とは商品が与える基本的な価値のことを言います。
機能や品質などがイメージに近いでしょう。
例えばカメラであれば「写真を撮る」、鉛筆であれば「ものを書く」、掃除機であれば「ゴミを吸う」などです。
その商品特有の機能のことを機能的価値と定義付けます。
これを高めていくと価値は上がりますが、他商品と差別化するにはとても難しい部分でもあるのです。
今の時代、何を購入したとしても、できることに大差はありません。
さらに情報化社会が進んだ今、新しい機能を生み出すことができたとしても、他者にすぐ真似をされてしまいます。
なので、機能的価値だけでブランディングするのはとても難しく不可能に近いのです。
ですが、商品を購入してもらうには、機能的価値は最低限必要なので、客観的に商品を見て不足していると感じるならば、まずはここから改善していく必要があるでしょう。
感情的価値
購入者に選ばれ、世の中で大ヒットを起こすには感情的価値によるものが大きいです。
感情的価値を構成しているのは主に、
- コンセプト
- キャラクター
- ストーリー
- デザイン
の4つであり、「共感」によって購入者との強い結びつきを生み出します。
この4つの要素について詳しく説明していきましょう。
コンセプト
コンセプトとは、ブランドや商品における「魅力的な世界観」のことです。
例えば、撮影女子会という大ヒットしたサービスがあります。
このサービスでは、自分の好みのドレスやプロのヘアメイクでドレスアップして友達や仲間と撮影会ができるものです。
これまでの女子会に飽きていた創始者の女性が、「ヒロイン体験をあなたに」というコンセプトで生み出したサービスです。
新しくて魅力的な世界観を提示することで、沢山の共感を生み出しビジネスとして成功を納めることができました。
このように、コンセプトが明確であればターゲットを絞ることも簡単にでき、ブランディングの軸に添えることも可能です。
キャラクター
キャラクターとは、その言葉の通り、「どんな人が?」をわかりやすくしたものです。
その人個人が個性的であったり、商品に関するイメージを担っている場合に成り立ちます。
ホテルやお菓子のマークに会社の社長の顔写真が大きく使われている例があります。
その商品やサービスを購入する際に、その社長自身に強い信頼感を持って購入することができると思います。
また、雑誌やテレビで取り上げられるその人達を見て、親近感が湧いたり、商品に対する熱意を感じ応援したくなったりと、ファンになる方も少なくないでしょう。
キャラクターが成り立つということは、まさに、「この人から商品を買いたい」というブランディングの成功例だと言えます。
ストーリー
ストーリーをうまく使って集客に成功した例は沢山あります。
CMや動画で商品やサービスのイメージをストーリーに見立てて紹介する手法です。
結婚式場や写真の転送サービスなど、普段から目にしている機会は多いと思われます。
結婚式場の動画では新郎新婦のドキュメンタリーが流れ、見た人に「この式場で私達も結婚式を挙げたら、動画のように素晴らしい式ができるんじゃないか」と思わせることが出来ました。
また、写真の転送サービスのCMでは、離れて暮らす家族に子供の写真を送ることで、「離れて暮らしていても、写真を送るサービスのおかげで仲良くコミュニケーションを取ることができる」と思わせてくれました。
ストーリーを軸にブランディングする場合は、見た人が何を感じるのか?何を思うのかが非常に重要になってきます。
売りたい商品やサービスを利用すると、「購入者の人生にどんな良いことが起こるのか」を想起させる構造を作ることで、結果的にその商品が売れるのです。
これこそまさに共感が生み出した感情的価値だと言えるでしょう。
デザイン
デザインというのは感情的価値を視覚化し、前面に置いたものです。
そのデザインの商品を持っている自分を見た人に、どのようなイメージを与えることができるのかということですね。
例えばApple製品を見た時に、あなたはどんなイメージを思い浮かべますか?
- スマートである
- シンプルで機能的
- 仕事が出来そう
- クリエイティブな才能がありそう
など、デザインが表現する商品のイメージを、自分のイメージに付け加えることができるのです。
そのイメージはブランドの持つイメージにも直結しています。
視覚的に世界観を伝え共感や憧れを呼ぶことで、ブランドとして確率させることができるのがデザインの持つ大きな力です。
自己表現的価値
自己表現的価値とは、「この会社を選びたい」と思わせることのできる「在り方」のことを言います。
いい会社とは、売り上げや利益の追求だけでなく、関わり合う全ての人から「この会社は良い会社だ」と言ってもらえるような会社のことです。
売り上げを伸ばす上で流行や好景気などは、一時的なものであり、過ぎ去ってしまえば今度は不景気が来るかもしれません。
不景気が来れば事業を縮小したり、社員を泣く泣くリストラしなくてはいけない状況になり得ます。
そうなれば先は細くなり、会社も社員も不幸になってしまいます。
波のある景気で奔走するよりも、いい会社だと認められれば永続企業にもなれるのです。
社員を大切にする会社の在り方は、自然と「この会社を選びたい」と思ってもらえるようになっていきます。
ブランディングの成功事例
ブランディングとは商品やイメージに限ったものではなく、企業や地域、学校など様々なものがブランドとして確立されています。
ここでは具体的なブランディングの成功事例を見て行きましょう。
- 企業ブランディング の事例
- 地域ブランディングの事例
- 大学ブランディングの事例
企業ブランディングの事例
- トヨタ自動車株式会社
高品質・高性能という組織としての価値観を体現することで、自動車企業のトップとして現在の地位を作り上げました。
トヨタ自動車は、サプライヤーの生産性を落とさずに人員を減らす手法や在庫リスクを減らす手法を広める活動を実地することで、ステークホルダーからの共感を得ることが出来ました。
この独自の改善方法は「KAIZEN」と名付けられ、自動車産業だけでなく全ての分野のビジネスモデルの在り方を変えてしまうほどの影響力を発揮しました。
高い品質の製品やサービスを提供し続けることで「世界のトヨタ」として揺るぎないブランド力を確立しています。
- 株式会社タニタ
タニタは健康器具を製造・販売するメーカーで、「人々の健康づくりに貢献する」という社会的意義の強いコンセプトを掲げたブランディングをしてきました。
働く人の健康を気遣った食事を提供する社員食堂が話題になり、社食メニューを再現できるレシピ本の出版や、一般の人に向けて食堂と同じメニューを提供する店舗を出店するまでに至ります。
タニタの製品やレシピを利用することで、健康を維持できることに共感したユーザー達は、「タニタブランド」の確立を後押しすることとなりました。
地域ブランディングの事例
地域ブランディングとは、その地域特有のものを用いた製品やサービスを提供することでブランドとして認知してもらう活動のことを言います。
- 瀬戸内海「直島」
「島×生活×アート」をコンセプトに、地域ブランディングに成功した香川県の離島のことです。
空き家になった古民家を改修し、アーティストが作品として仕上げる「家プロジェクト」により、昔からの島の暮らしをアートに昇華させることが出来ました。
様々な活動を得て、3万人しかいなかった観光客を66万人にまで増加させるという結果を残しています。
直島の地域ブランディングが成功したのには、ブランディングの軸を「観光客を増やすこと」としなかったからだと言われています。
常に島民の満足度に重きが置かれており、定期的な調査によって課題を浮き彫りにし、解決へと向かって行くのです。
「住んでいる人々が誰かを招きたくなるような自慢の島になれば、自然と多くの人が島を訪れる」というスローガン通り、皆に愛される人気の島になっています。
- 島根県海土町
島根県隠岐ノ島諸島に位置する海士町は「ないものはない」のキャッチコピーで地域のIターン定着率と高校の受験倍率を引き上げることに成功しました。
地域同士のつながりを大切にし、シンプルながら満ち足りた暮らしをしようという願いが込められています。
ブランディングの軸となるアイデンティティを島民のフィロソフィーとして確立したことで、住民からの共感と好意を得ることが出来ました。
大学ブランディングの事例
大学ならではの特色を際立たせることで、学生から「選んでもらえる」ブランド力を持った大学になれます。
各々の大学の強みとなるものを打ち出すことができるかが鍵となります。
- 武蔵野大学
2003年に武蔵野女子大学から武蔵野大学へと解消し、2004年から男女共学の総合大学として一新しました。
男女共学化してからも進化を続け、2024年の創立100年に向けてブランディングが再構築されています。
大学が主語になりがちところから敢えて目線を外し、「世界の幸せをカタチにする」というブランドコンセプトとなりました。
常に発展・確信し続けるという思いを込め、教育プログラムの改善・運用まで一気通貫させることを目的としています。
まとめ
今回はブランディング方法・成功事例について多方面からお話ししてきました。
ブランディングで成功するには、ユーザーから共感を得ることが最も重要です。
商品やサービスのターゲット層が何を求めているのかをしっかりと調査・見極めて、ブランド戦略を練ってみてください。